アラフォースポーツライターの日米プロ野球コラム

国内のプロ野球からメジャーリーグについてまで盛り沢山!

ヤクルト版メークドラマはあるのか?

 ヤクルトの昨日の7回からの10点差逆転劇は、プロ野球史上では20年ぶり4度目とのことらしいが、仮に昨日の試合が社会人の都市対抗野球だったとしたら、あわやコールド寸前だっただろう。何が起きるか分からないのが野球というのがまさに昨日の試合だ。

 さらに驚いたことに、ヤクルトは昨日26日の試合開始前の時点で首位広島に26.5ゲーム差、5位の中日にも8.5ゲーム差で最下位であり、今シーズンは優勝はおろかCSもほぼ可能性がないというにもかかわらず、昨日の神宮での観客動員数は28654人とほぼ満員状態である。テレビで見ても、現にレフトスタンドまでヤクルトファンが陣取っていた。対照的に5位の中日はファン離れが加速していて、地元ナゴヤドームも平日は閑古鳥が鳴いているような状態にもかかわらずだ。ヤクルトファンがこれほど熱狂的だとは思わなかった。

 巨人とともに東京都をフランチャイズとする球団で、唯一複数の球団が同一の都道府県を保護地域としているのも巨人とヤクルトだ。ファンの数では到底巨人に及ばないと思うが、人気球団の一つのようである。

 1990年から9年間監督を務めた野村克也氏の下では4度のリーグ優勝、3度の日本一に輝いている。また後任の若松勉監督の下でも、2001年にリーグ優勝、日本一に輝いている。最近では一昨年2015年、真中満監督就任一年目で、シーズン後半に巨人、阪神との優勝争いに競り勝ち、14年ぶりのリーグ優勝を決めている。

 先週まで47年ぶりとなる14連敗を喫したヤクルトだが、就任3年目となる真中監督もファンからかなり野次られたようである。昨日の大逆転劇は、そういったファンのうっぷんを晴らすかのような試合だっただろう。

 現在3位の阪神とは15.5ゲーム差だ。まだ2か月以上ある残りのシーズンで、CS争いに加われる可能性は前述したように極めて低いがゼロではない。だが、山口俊の問題で下降気味にある4位の巨人と、勢いを失いつつある5位の中日の対戦成績次第では、気がつけば両チームを抜いて3位に浮上していたということもあるかもしれない。シーズンを3位で終わればCSに進出となり、2010年にシーズン3位からCSを勝ち上がって日本一にも輝いたロッテの時のような下剋上が期待されるかもしれない。現在最下位だからといって諦めることなく、昨日の勢いそのままに残り試合を勝ち抜いていけば、ヤクルト版メークドラマも夢じゃない。残りシーズンにぜひ期待したいところだ。

張本さん、山口俊に「喝」あげて下さい!

 先月14日の東京ドームでのソフトバンク戦で、6回まで無安打に抑え、継投によるノーヒットノーランを達成させた山口俊の病院での暴行事件が18日に発覚し、昨日19日、出場選手登録を抹消されたようである。球団の指示により練習参加も自粛しているようだ。

 病院側と暴行を受けた警備員からは器物損壊と傷害の疑いで被害届が出され、警察も受理している。今後どうなるかは現時点ではまだ分からないが、少なくとも山口の今季登板はもうないことだけは明らかだろう。

 昨年オフにDeNAからFA移籍したものの、右肩違和感の影響で調整が続いていたため出遅れ、先月14日のソフトバンク戦に初登板すると、見事6回まで無安打に抑えて初勝利し、試合後のヒーローインタビューで涙ながらに答えていた時は感動し、このブログでも書いたが、残念ながら今回の一件で見損なってしまった。

 昨日19日のセリーグ全試合終了時点で首位広島に14.5ゲーム差と、優勝は難しいかもしれないが、現在4位で3位のDeNAには5ゲーム差で、CS争いには十分加われるかもしれないという時に起きた出来事だけに、巨人球団としてもショックは大きいだろう。

 巨人は2015年にも、野球賭博事件で次々と選手の関与が発覚し、球団もNPBから制裁金計1500万円の処分を受けた。これと関係あるのかは分からないが、この年のシーズン終盤で、巨人はヤクルトとの優勝争いに敗れて4連覇を逃している。

 しかし今回の山口の暴行事件は野球賭博より深刻である上、出場登録を抹消されたことにより、せっかくFAで獲得した新戦力を失うというのも大きな痛手となるだろう。昨日の試合(中日戦)には勝ったが、先月球団ワーストの13連敗を喫したように、せっかく取り戻した勢いを失い、また失速しかねないとも言えないのである。何か球団に暗雲が立ち込めてきたような気がしてならない。

 先月のソフトバンク戦で初登板し、継投によるノーヒットノーランを達成した時は、サンデーモーニングのレギュラーコメンテーターで野球評論家の張本勲氏は山口に「あっぱれ」をあげていたが、今回は間違いなく「喝」が与えられるだろう。

 山口には、球団のためにもファンのためにも、いち早く謝罪会見を行ってほしいところだ。

広島の勢いは今後も続くのか

 プロ野球はセパ両リーグともに半分以上の試合が終わり、今週末のオールスターを前にして、昨日9日の全試合終了時点でセリーグは広島が2位阪神に8.5ゲーム差をつけて連覇に向けて独走態勢に入り、パリーグ楽天ソフトバンクの熾烈な首位争いが繰り広げられている。

 セリーグで特に頑張ってほしいのは現在最下位のヤクルトだ。チームは現在7連敗で、ついには真中監督まで「真中辞めろ!、責任取れ!」などとファンから野次を浴びる事態になってしまった。

 特に広島との神宮での3連戦、抑えの秋吉の故障離脱で急遽ストッパーを務めることになった新守護神小川が昨日9日と7日の最終回に登板したものの、7日は代打新井に逆転3ランを浴びて5点差をひっくり返されれば、昨日もピンチを招き、再び新井を迎えたところで、真中監督をはじめ選手らがマウンドに駆け寄って落ち着くよう声をかけたものの、またしてもタイムリーを打たれて同点にされてしまったのであった。

 ライアンこと小川泰弘はプロ5年目で、初めてのリリーフだから無理もなかったかもしれないが、勝ち試合を2度も逃してしまったのは大きいだろう。特に7日の5点差をひっくり返された試合はショックが大きかったはずだ。

 おまけに運が悪いことに、大体月曜日は試合がないわけだが、今日からは東京ドームで巨人との3連戦だ。ヤクルトとしては負の連鎖を断ち切るために今日は休みたかっただろう。

 週刊ベースボール先週号で、広島や巨人のOBの川口和久氏が言うには、広島の独走を食い止めるために、5球団は昔の巨人相手みたいに、いい投手を全部広島に当てるローテにしてなんとか引きずりおろしてほしいと言っている一方で、今はCSがあるから、広島は仕方ないでほかに当てるのもチームの作戦だから文句は言えないけど、やっぱり強いチームに食らいついて優勝を目指すべきだとも述べている。

 確かにあと60試合ぐらいあるが、優勝は広島に譲ってあきらめてCS出場を目指すのか、あるいは川口氏が言うように、打倒広島でチームを優勝争いに持っていくかは各チーム事情によるだろう。

 既にシーズンは後半戦に突入しているが、セリーグはこのまま広島が独走してしまうのか、あるいは96年や2008年の時の巨人のようなメークドラマがあるのか、方やパリーグ楽天ソフトバンクの一騎打ちが続くのか、あるいは現在3位の西武が食い込んでくるのか、今後も目が離せないところである。

10年前の夏の全国大会決勝戦での疑惑の判定


懐かしの高校野球 佐賀北vs広陵 2007年

 昨日は、1969年夏の高校野球全国大会で力投した青森県代表三沢高校太田幸司投手を取り上げ、この年の決勝戦がこれまでの高校野球史上最も歴史的な試合だったということについて触れたが、今からちょうど10年前の2007年に別な意味で球史に残る決勝戦があったのを覚えているだろうか。佐賀県代表の佐賀北高校広島県代表の広陵高校との一戦である。当時の球審の疑惑の判定が佐賀北高校を優勝へと導いたのではないかと言われている試合だ。

 当時の広陵のバッテリーは、現在広島カープで活躍している野村祐輔投手と現在巨人で活躍する小林誠司捕手で組んでいた。8回表終了時点で広陵が4-0とリードし、誰もが広陵勝利を確信していた矢先、その裏の佐賀北の攻撃で押し出し四球と満塁ホームランで逆転を許してしまったのである。8回裏一死満塁の場面でカウント1-3から広陵のエース野村が投じた5球目が低めギリギリもボールと判定され、押し出しで1点を返され、野村はこれに動揺したのか、次の打者に逆転満塁弾を浴びてしまったのだった。

 広陵の中井監督は明らかなストライクをボールと判定されて押し出しになったと記者団に怒りをぶつけたことで物議を醸しだし、その後ネット上でもあれはストライクだボールだで意見が分かれたわけだが、あの回の佐賀北の応援はボルテージが上がっていたせいか、審判が佐賀北の応援の雰囲気にのまれて佐賀北に有利な判定をしたのではないかという疑惑も取沙汰されている。まさか次の打者が満塁ホームランを打つなどと思ってもいなかったからだろうか。今もって真相は謎である。

 そういえば広島カープの緒方監督も佐賀県出身である。西武の辻監督もそうだ。全国ではあまり報じられなかったが、先日まで行われていたセパ交流戦で佐賀対決というのがあり、まさに埼玉のメットライフドームで行われた西武ー広島戦で、結果は2勝1敗で広島が勝ち越し、両監督の地元佐賀県では大きく報じられたそうである。

 2007年の夏の全国大会での佐賀北高校の優勝は、同じく夏の全国大会で1994年に佐賀商業高校が成し遂げて以来、佐賀県勢としては2度目の快挙だった。

 佐賀県は福岡県と接していることもあり、福岡ソフトバンクホークスファンが多いらしいが、残念なことに現在ソフトバンクには佐賀県出身の選手は一人もいないようだ。強いていえばオーナーの孫正義氏が佐賀県出身である。

太田幸司の力投はすごかった

 昨日28日、青森県弘前市で行われた楽天オリックス戦で始球式を務めた地元青森県出身の太田幸司氏だが、プロ入り後近鉄などでプレーしているが、むしろプロ入り前の三沢高校時代の甲子園での力投が記憶に残っているという人が多いのではないだろうか。

 筆者はまだ生まれていないが、1969年夏の全国大会での愛媛代表の松山商業高校との決勝戦はこれまでの高校野球史で最も歴史的な試合だっただろう。当時優勝候補などとはとても呼べなかった三沢高校が、東北勢として戦後初の決勝進出を果たし、その決勝戦では2日間の熱戦が繰り広げられた。

 初日は三沢の太田、松山商の井上明両投手が延長18回を投げ合うも、0-0のまま決着がつかず大会規定により引き分けとなった。翌日再試合が行われた結果、4-2で松山商が勝利し、東北勢初の優勝とはならなかった。ちょうど決勝戦が行われた2日間、どこかの新聞記者が試合中に青森県を取材したそうだが、街中で人影を全く見かけなかったという。ということは青森県だけでみると視聴率100%近く記録したのではないだろうか。

 ちなみに4月20日の記事「今年こそ東北勢に深紅の優勝旗を!」http://www.probaseballwriter.com/entry/2017/04/20/121704でも書いたが、東北6県の全国制覇は今もって春夏通じてないのである。最近では青森県代表の八戸学院光星高校や一昨年の宮城代表の仙台育英高校のように決勝戦までは行くようになったが、その決勝戦で強豪校相手にあえなく敗退してしまうのである。それゆえ「深紅の優勝旗白河の関を越えない」と何かのジンクスかのように言われるようになってしまったのである。

 今年ももうすぐ夏の高校野球全国大会が始まるが、もちろん今年も期待している。

 話は太田に戻るが、高校卒業後はドラフト1位で近鉄に入団したが、当時現在楽天の監督を務めている捕手の梨田昌孝氏とバッテリーを組んでいたのである。昨日の始球式でも梨田監督相手に投げたそうで、太田ー梨田の近鉄バッテリーが太田の故郷青森県で43年ぶりに再現されたのであった。

 楽天は昨日の試合では見事3-2で勝利し、昨日28日のパリーグ全試合終了時点でも首位をキープしている。ぜひ今年もペナントを制してもらい、かつて太田が青森県民を沸かせたように、震災からの復興に取り組んでいる東北の人々を再び勇気づけてもらいたい。

張本さん、山口俊に「あっぱれ」上げて下さい!

 昨日14日の東京ドームで行われた巨人ーソフトバンク戦で、セリーグ史上初の継投によるノーヒットノーランという快挙が生まれた。昨年オフにDeNAから巨人にFA移籍した山口俊が6回まで無安打に抑えたわけだが、右肩違和感の影響で調整が続いていたため出遅れ、昨日が1軍初登板だった。その山口もヒーローインタビューでお立ち台に上がると、涙がこぼれるあまり言葉に詰まる場面もあった。先週7日のロッテ戦で初勝利した中日の大野も泣いていたが、ピッチャーが初勝利した時の嬉しさを改めて感じることができた。

 6回表終了時点で球数は102球。その裏に坂本の2ランが飛び出し2-0となったことでひょっとして7回も続投させるかなと思って見ていたら、7回のマウンドにはマシソンが上がっていた。この時、2007年日本シリーズ第5戦での9回表に、当時中日の監督だった落合博満氏がパーフェクトピッチングだった山井を守護神の岩瀬に交代させた場面を思い出してしまった。あの試合も継投による完全試合達成で中日が日本一に輝いたわけだが、試合後も山井の交代劇については、ネット上でも野球評論家の間でも賛否両論分かれ物議を醸しだしたわけだが、今回の山口に関しては、6回にテイクバックの際にボールを落とすという珍しいミスでボークをとられた場面もあり、明らかに疲れが見え始めており、復帰初登板ということもあって高橋監督は交代を決断したのだろう。現に試合後のインタビューでも山口は6回での降板に関しては「僕自身疲れていたので」と答えていた。

 先週、球団ワーストの13連敗を喫した巨人だが、今週に入り本拠地東京ドームでソフトバンクに2連勝し、予想通りようやく息を吹き返してきた感じだ。今後の日程だが、リーグ戦再開前に4日間の休みを挟み、25日の中日戦までずっと本拠地での試合が続くのでいくぶん楽になるだろう。昨日14日の全試合終了時点で首位広島に12.5ゲーム差で借金9だが、今シーズンはまだ前半戦の最中なので、焦らずにいってまた首位争いに加わってほしい。

 FAで獲得した山口俊という新戦力が昨日初登板で初勝利し、継投によるノーヒットノーランという快挙を達成したことがチーム奮起の起爆剤になるかどうか今後も注目したいところだ。

 今週日曜のサンデーモーニングのスポーツコーナーのレギュラーコメンテーターで野球評論家の張本勲氏はぜひ昨日の山口に「あっぱれ」を上げてほしい。

張本、野村、王が仮にメジャーでプレーしていたならば

 日本時間で昨日12日、アストロズ青木宣親が日本人選手で史上7人目となる日米通算2000本安打を達成した。今シーズン中に2000本安打を達成できそうな選手が6人いる中で、国内では今月3日に中日の荒木雅博が達成したばかりだった。

 昨シーズン終了時点で日米通算最多安打数を記録しているのはマーリンズイチロー(4308安打)に他ならないが、その次が現在楽天でプレーしている松井稼頭央(2683安打)、その次が巨人やヤンキースで活躍した松井秀喜氏(2643安打)である。ただ、まだポスティングシステムがなかった頃の1950年代から80年代初頭にかけて活躍し、安打を量産した3人の選手を忘れてはいけない。日本ハムや巨人、ロッテで活躍した張本勲氏の通算安打数3085安打は日本記録である。次いで南海、ロッテ、西武で活躍した野村克也氏の2901安打、巨人生え抜きの王貞治氏の2786安打である。

 特に通算安打数日本記録保持者の張本は、イチローが日米通算4000本安打を達成したことについて、メジャーリーグは日本のプロ野球より試合数が多いからと言っているが、張本にしても野村にしても王にしても、当時仮にポスティングシステムを行使してメジャーでプレーできる制度があったならば、果たしてイチロー並みの記録を樹立することができたであろうか。

 イチローは昨シーズンまでに、オリックスマリナーズマーリンズで25年間プレーしており、張本は1959年から81年まで日本ハム、巨人、ロッテで23年間プレーしている。一方野村は1954年から80年まで、南海、ロッテ、西武で27年間(実働26年間)、王は1959年から80年まで巨人一筋で22年間プレーしている。3人の中でも野村の現役時代が実働26年間と最長であり、現時点ではイチローを上回っているが、それでも2901安打でイチローの4308安打をはるかに下回っている。彼らが活躍していた1960年、70年代当時は年間130試合だったのに対してメジャーリーグでは既に162試合行われており、メジャーの年間試合数が32試合多かった。

 張本らの現役時代に仮にもしポスティングシステムがあったならば、例えば張本が日米通算最多安打記録を達成し、今のイチローがその記録を破るかどうかで話題になっていたのではないだろうか。

 話は青木に戻るが、青木が所属するアストロズは現在アリーグ西地区で首位を独走しており、青木自身は最終的にはチームのワールドシリーズ進出を目標にしているので、同じ外野手のイチローとともに今後の活躍にも期待したいところだ。