アラフォースポーツライターの日米プロ野球コラム

国内のプロ野球からメジャーリーグについてまで盛り沢山!

張本、野村、王が仮にメジャーでプレーしていたならば

 日本時間で昨日12日、アストロズ青木宣親が日本人選手で史上7人目となる日米通算2000本安打を達成した。今シーズン中に2000本安打を達成できそうな選手が6人いる中で、国内では今月3日に中日の荒木雅博が達成したばかりだった。

 昨シーズン終了時点で日米通算最多安打数を記録しているのはマーリンズイチロー(4308安打)に他ならないが、その次が現在楽天でプレーしている松井稼頭央(2683安打)、その次が巨人やヤンキースで活躍した松井秀喜氏(2643安打)である。ただ、まだポスティングシステムがなかった頃の1950年代から80年代初頭にかけて活躍し、安打を量産した3人の選手を忘れてはいけない。日本ハムや巨人、ロッテで活躍した張本勲氏の通算安打数3085安打は日本記録である。次いで南海、ロッテ、西武で活躍した野村克也氏の2901安打、巨人生え抜きの王貞治氏の2786安打である。

 特に通算安打数日本記録保持者の張本は、イチローが日米通算4000本安打を達成したことについて、メジャーリーグは日本のプロ野球より試合数が多いからと言っているが、張本にしても野村にしても王にしても、当時仮にポスティングシステムを行使してメジャーでプレーできる制度があったならば、果たしてイチロー並みの記録を樹立することができたであろうか。

 イチローは昨シーズンまでに、オリックスマリナーズマーリンズで25年間プレーしており、張本は1959年から81年まで日本ハム、巨人、ロッテで23年間プレーしている。一方野村は1954年から80年まで、南海、ロッテ、西武で27年間(実働26年間)、王は1959年から80年まで巨人一筋で22年間プレーしている。3人の中でも野村の現役時代が実働26年間と最長であり、現時点ではイチローを上回っているが、それでも2901安打でイチローの4308安打をはるかに下回っている。彼らが活躍していた1960年、70年代当時は年間130試合だったのに対してメジャーリーグでは既に162試合行われており、メジャーの年間試合数が32試合多かった。

 張本らの現役時代に仮にもしポスティングシステムがあったならば、例えば張本が日米通算最多安打記録を達成し、今のイチローがその記録を破るかどうかで話題になっていたのではないだろうか。

 話は青木に戻るが、青木が所属するアストロズは現在アリーグ西地区で首位を独走しており、青木自身は最終的にはチームのワールドシリーズ進出を目標にしているので、同じ外野手のイチローとともに今後の活躍にも期待したいところだ。

田中に続いて則本もメジャー移籍か?そして楽天は?

 楽天則本昂大の勢いが止まらない。昨日8日の本拠地DeNA戦で、自身のプロ野球記録を更新する8試合連続二桁奪三振を記録し、メジャーリーグタイ記録となった。次回の登板で9試合連続達成となればメジャー記録も更新することになる。ちなみに次回の登板は、これまでのローテーション通りでいくと、6月15日の神宮でのヤクルト戦になるだろう。交流戦が始まり初のDH制のないセリーグ本拠地での登板となるわけだが、ぜひ達成してもらいメジャー記録を破ってほしいところだ。前にも書いたが、神宮のようなセリーグの本拠地では打席にも立てるのだから、バッター目線での投球の見え方を感じ取れるわけであり、自身の今後のためにもいい勉強になるだろう。

 その則本が同じ楽天の先輩である田中将大に続いて、将来メジャー移籍があるのかどうかも注目されている。田中がいなくなった後は、チーム不動のエースとして2014年から3年連続で奪三振王に輝いた。勝利数も田中がまだいた2013年から4年連続で二桁だ。

 今年26歳5年目のエースだが、昨年オフに球団と年俸2億円で3年契約を結んでおり、その契約が満了する2019年オフにはメジャー行きもあるのではないかと取沙汰されている。ちなみに田中は楽天で7年間プレーした後25歳でヤンキースに移籍している。その先輩の田中に刺激されているはずなので、メジャー移籍は可能性として十分あり得るだろう。

 しかし日本ハム大谷翔平に続いて則本と、有能な選手が次々とメジャーに移籍してしまうと、日本のプロ野球の人気低迷もさることながら、現状ではメジャーリーガーは出場できない2020年東京五輪で彼らが活躍する姿が見られないのは心残りである。

 田中が楽天に入団した2007年は野村克也氏が監督として指揮を執っており、則本が入団した2013年は星野仙一氏が指揮を執っており、この年楽天はリーグ優勝し日本一にも輝いている。田中は野村と星野の二人に、則本は星野に育てられたわけであり、今日の田中や則本があるのも野村や星野のおかげである。もっとも現在監督を務めている梨田昌孝氏もキャッチャー出身であることから、則本と女房役でもあるキャッチャーの嶋基弘には細かく指導しているものと思われるが。

 次回の登板でメジャー記録更新ともなる9試合連続二桁奪三振記録が期待されている則本も勿論だが、現在も首位をキープしている楽天が逃げ切り、2005年に新規参入球団として創設されて以来2度目のリーグ優勝を果たせるかも注目だ。

200勝投手がいかにすごいか分かる


2017年6月7日 中日・大野投手ヒーローインタビュー

 昨日7日のZOZOマリンスタジアムで行われたロッテー中日の交流戦で、今季の開幕投手も務め、その後開幕から2か月余り勝利のなかった中日の大野雄大が昨日先発8試合目にしてようやく初白星を手に入れた。その大野がヒーローインタビューでマイクを向けられると、涙があふれるあまり言葉が出ず、40秒間の沈黙の後、スタンドの「大野コール」に応えるかのように「勝つのって難しいと改めて感じました」と口にしたシーンをニュースで見たが、筆者も思わずもらい泣きしてしまった。

 2010年ドラフト1位の7年目28歳のサウスポーは、昨年は左肘痛の影響もあり7勝しかできなかったので、エースとして今季は2桁勝利を奪回したいと意気込みを語ったものの、開幕投手を務めながら全く勝てず、中継ぎに回ったりもした。それでも結果が出せなかったので2軍落ちも経験し、ようやく手にした白星だったのである。

 大野は2014年は25試合に登板し10勝を挙げており、一昨年2015年は28試合に登板し11勝を挙げており、いずれも2桁勝利を達成しているものの、昨年2016年は19試合に登板し7勝しかしておらず防御率も3点台だった。

 中日といえば、つい先日3日に内野手荒木雅博がプロ22年目39歳にして2000本安打を達成したことで話題になったが、大野と同じサウスポーで2008年に42歳という最年長で200勝を達成した山本昌投手を忘れてはいけない。大野からすれば大先輩にあたるわけであり、山本の200勝達成は中日球団としては杉下茂氏以来51年ぶりという大記録だったわけである。山本は1983年にドラフト5位で中日に入団しており、200勝達成はプロ25年目にしての偉業だったわけである。ちなみに山本は現役時代7度の日本シリーズを経験しているが、日本シリーズでは1勝もできなかった。

 中日は昨年ドラフト1位で獲得した右投手の柳裕也もようやく1軍に登録されすでに4試合に登板しているが、まだ勝ち星はない。柳をはじめ、新人や若手の投手も1勝する難しさを感じているとは思うが、昨日の大野の涙ながらのインタビューを見て相当刺激を受けたはずだ。

 中日は昨日7日の全試合終了時点で巨人を抜いて4位に上がってきており、ここの所勢いに乗っているようだが、特に大野をはじめとする投手陣は、ぜひ2015年に引退するまで219勝挙げた大先輩の山本昌を見習いながら1勝1勝を積み重ねていってほしい。 

巨人は来週以降立ち直るのでは?

 巨人が球団史上3度目の10連敗を喫してしまったことで、すでにネット上では高橋由伸監督の解任説が取沙汰されている。5月25日甲子園での阪神戦に敗れると、地元東京ドームで広島に3連敗し、5月30日に交流戦が始まると、宮城で楽天に3連敗、そして2カード目は再び本拠地東京ドームに戻ってオリックスに3連敗を喫し、球団史上3度目、原辰徳前監督時代の2006年以来11年ぶりの出来事となってしまったわけである。

 ちなみに前回原前監督が10連敗を記録した2006年のシーズンは、自身通算12年間の監督歴で唯一4位というBクラスに終わっている。クライマックスシリーズが導入された2007年以降は毎年Aクラス入りしているが、昨日4日の全試合終了時点でDeNAに抜かれて4位に転落し、すでに借金7である。

 このままいけば優勝はおろか、2006年の時の再現でAクラス入りも危うくなり、クライマックスシリーズ進出も逃せば球団初となる。高橋監督は球団と3年契約を結んでおり来年まで契約があるが、もし今シーズンBクラスで終わるようなことがあれば、球団側から解任される可能性は低いにしても、自ら辞任を申し出る可能性はあるのではないかと言われている。

 ちなみにポスト高橋は誰かということになると、巨人のOBでもあり、ヤンキースでも活躍した松井秀喜氏が有力なのではないかと言われている。しかし松井は3月のWBC侍ジャパンの監督を務めた小久保裕紀氏の後任となる次期代表監督候補にも名前が挙がっている。

 昨年オフにFAで森福允彦陽岱鋼、山口俊らを獲得するものの、現在1軍に登録されているのは森福だけである。明日6日の西武戦で陽は1軍に合流させ、山口も13日のソフトバンク戦に1軍先発させる方向だが、新戦力が実戦でどれだけ期待できるかは現時点では未知数だ。

 しかしシーズンが始まってまだ3分の1しか経っておらず、特にセリーグはペナントの行方はまだまだ分からない。巨人は明日6日からの西武戦は、西武の本拠地埼玉のメットライフドームで行い、西武との3連戦の後すぐ北海道に飛び、9日からは札幌ドームで日本ハムとの3連戦が控えている。その後は25日の中日戦までずっと本拠地東京ドームでの試合になる上、23日から再開するリーグ戦の前に4日間休みがあるので少しは楽になるだろう。今週だけが山場だが、今週を乗り切れば立ち直るかもしれない。今後に期待したいところだ。

パリーグの投手は打席に立つことにより成長する

 セパ交流戦が始まり、パリーグの本拠地で行われた1カード3試合が昨日6月1日で終わった。1カード目の対戦成績はパリーグの12勝6敗である。今日2日からの2カード目はDH制のないセリーグの本拠地での試合となる。すなわち普段バットを持たないパリーグの投手も打席に立たなければいけなくなる。セリーグの投手からすれば、相手チームの普段打席に立たないピッチャー一人分は代打が出るまでほぼ確実にアウトにできるから、実質8人との勝負になると一見思われがちだが、実はこれがパリーグの投手をさらに成長させる要因になっているのである。

 昨日1日に7試合連続二桁奪三振という日本記録を樹立した楽天則本昂大なんかも、セリーグの本拠地で先発する時はヘルメットを被ってバットを持ち打席に立たなければならなくなるわけだが、この時仮に凡退しても、パリーグの投手は打席に立つことによって勉強させてもらっているのである。

 オリックスのエース金子千尋の話では、交流戦で打席に立つことによって実際に相手投手からの投球を目の当たりにすることができ、その時に変化球の見え方などをバッター目線で感じ取れるという。そういう意味で交流戦はいい機会だと言っている。

 昨日の則本といい、現在メジャーリーグで活躍しているダルビッシュや田中といい、有能な投手は大体パリーグのチームに属していることが多いが、DH制があるおかげでめったに打撃練習をすることなく、投球練習だけに専念できるから防御率がよいのかと思っていたらどうも違っていたようだ。現在はまだ欠場しているが、二刀流大谷翔平の昨年の防御率がよかったのは、登板しない日は打席にも立っているからなのかも知れない。だとすれば金子の話は当てはまっているだろう。

 もちろんセリーグにも3試合連続完封を記録した巨人の菅野をはじめ、有能な投手はそれなりにいるわけだが、やはり打席にも立つからこそなのかもしれない。金子が言うようにバッター目線で投球の見え方を感じ取るということは大事だということがよく分かる。

 今日からセリーグ本拠地での3連戦となるが、この3連戦でパリーグの投手が打席に立つことによって得るものはあるか、何を学んだのかも知りたいところだ。そして全18試合ある交流戦が終わりリーグ戦に戻った後は、ぜひ交流戦で学んだことを活かしてほしい。

セパ交流戦の今後は?

 今日からセパ交流戦が始まる。2005年に始まって以来、過去12年間の対戦成績は、セリーグ1勝、パリーグ11勝と、圧倒的にパリーグが勝ち越している。今年の交流戦パリーグ有利との見方が大きい。

 一方、交流戦の優勝チームを見ると、セリーグのチームで優勝したのは、2012年と14年の巨人だけである。ただ今年は優勝チームは決めず、勝ち越したリーグの6球団に賞金が贈られ、ドラフトでのウエーバー優先権が与えられるのみのようである。

 交流戦メジャーリーグでも行われており、12年前に日本のプロ野球で導入された時も色々と賛否両論あった。交流戦をやるならば、戦前の時のように1リーグ制にして、12球団が総当たりでシーズンを戦い、最も勝率の高いチームを日本一にしようなどという意見も少数ながらあった。

 もちろん交流戦ならではの見どころもある。普段のリーグ戦で対戦することのない投手との対決などである。ただ今年の交流戦大谷翔平の欠場が濃厚なので、セリーグの球団からは観客動員数の減少が懸念されている。ただでさえ交流戦に前向きでないセリーグからは、今年のオフに大谷のメジャー移籍が決まれば、来季から廃止の声も出始めるのではないかとも言われている。

 2014年の巨人のように、交流戦でも優勝し、リーグ優勝も果たし、日本一が期待されていたにもかかわらずクライマックスシリーズで敗退し、日本シリーズに出場できなかったケースもあれば、2007年の日本ハムのように、交流戦で優勝し、リーグ優勝し、クライマックスシリーズも勝ち上がったものの、日本シリーズで敗れたケースもある。

 当たり前の話だが、交流戦では優勝したものの日本シリーズでは勝てなかった、あるいは日本シリーズに進出できなかったというのは、一言でいえば長期決戦を勝ち上がったのか短期決戦を勝ち上がったのかという違いだけである。交流戦は今年は各チーム総当たりで6カード18試合あるが、ここでの勝敗数が全143試合ある公式戦の成績に反映されるだけにすぎないわけである。一方、クライマックスシリーズ日本シリーズは短期決戦で、ピッチャーの先発ローテーションなども考慮した上で戦わなければならないので、それなりの対策が必要になってくるわけである。

 導入時は各チーム36試合あった交流戦の試合数も現在は半分の18試合に縮小され、今後セリーグ側の意向を受けてさらなる縮小、廃止も予想されるが、どうなるのか気になるところだ。筆者個人的には廃止する必要はないと思うのだが。

セリーグはまだまだ分からない!

 昨日24日は、NHKBSでたまたまDeNAー中日戦が中継されていたので観てしまった。結果は4-2で中日が勝ったが、昨日の試合の立役者は何と言っても猛打賞を記録した京田陽太に他ならないだろう。

 特に、3回表二死二塁の場面で打った打球は右中間を破って京田は3塁まで進んだが、DeNAのセカンド石川がもたついている間に俊足を活かしホームまで帰ってきた。てっきりランニングホームランかと思われたが、記録は3塁打とフィルダースチョイスとのこと。高校野球ではよく見られるプレーだが、プロ野球では珍しいシーンであった。

 2000本安打達成を目前に控える、同じ俊足で39歳のセカンド荒木雅博と二遊間を守り、試合中守備についている間もよく指示を受けるそうだ。そんな京田だが、昨年ドラフト2位で青森山田高校から中日に入団し、早くも新人王が期待されているほどだ。もっとも昨年中日が最下位じゃなかったら、ドラフトで京田を2位指名できなかったかも知れなかっただけに、中日にとってはある意味ラッキーだっただろう。

 京田の母校青森山田高校は、巨人の坂本勇人の母校光星学院高校(現 八戸学院光星高校)と共に、青森県勢としては主にこの2校が甲子園に出場している。県大会の決勝戦でもこの2校の争いになることが多い。高校野球では青森県勢も含めて東北勢は毎年応援しているので、出身は他県であっても青森県の高校を卒業している二人には頑張ってほしいところだ。

 それにしても最近の中日の勢いには少々驚いている。昨日24日のセリーグ全試合終了時点で、未だ最下位であるには変わらないが、首位阪神に8ゲーム差と、少し差を縮めたようだ。先週ナゴヤドームでの対広島戦で3連勝し、何か勢いにのったような気もしなくもないのである。昨日の京田といい、昨日24日の試合終了時点で2000本安打まであと9本と迫っている荒木、リーグ打率トップの大島洋平といい、1、2、3番が調子を上げてきており、4番には現在リーグ2位となる9本のホームランを放っている強打者ビシエドが控えているわけであって、かつての強竜打線を思い出されるぐらいだ。ただ投手陣が先発、リリーフを含めて安定しないのが懸念材料だ。

 現在セリーグは、阪神、広島、巨人の三つ巴の首位争いとなっているが、来週からセパ交流戦も始まるわけであり、現在下位の3チームが今後首位争いに加わることも十分予想できるだろう。